ウソ★スキ
ママには、途中で電話を入れた。
「遅くなるけど、ちゃんと家に帰るから心配しないで」
ママは「分かった」って、静かに、優しく言ってくれて。
「……ねえ、ママ」
「なあに?」
「あたし……家に帰ったらママのおむすびが食べたいな」
「了解!」って明るく言うママは泣いていたけれど、あたしはそれに気付かないふりをして電話を切った。
そして、ようやく辿り着いた家の前の公園。
家までもう少しだ。
あと、もう少し……
だけど、あたしはそこで足を止めた。
だって──
公園の入り口には、1台のバイクが止まっていて、
公園のベンチには、昼間泣きながらその背中に抱きついた、見覚えのある人影があって……
「……先輩」
あたしが公園に足を踏み入れると、それに気付いた先輩は両手で自分の頭を抱えてしまった。
「……どうして? どうして先輩が、ここに?」
「それはこっちの台詞だよ」
深い溜息をひとつ吐きながら、先輩が一瞬だけ、目の前に立つあたしを見上げた。
……だけど、またすぐに先輩は俯いてしまって。
「終電の時間まで待って、それでも帰ってこなかったら、今度こそ潔く美夕ちゃんのことを諦められると思ったのに」
ゴクリと唾を飲み込んで、先輩は続けた。
「それなのに……どうして帰ってくるんだ?」
両手で顔を覆ったままそう言った先輩の声は、震えていた。
「遅くなるけど、ちゃんと家に帰るから心配しないで」
ママは「分かった」って、静かに、優しく言ってくれて。
「……ねえ、ママ」
「なあに?」
「あたし……家に帰ったらママのおむすびが食べたいな」
「了解!」って明るく言うママは泣いていたけれど、あたしはそれに気付かないふりをして電話を切った。
そして、ようやく辿り着いた家の前の公園。
家までもう少しだ。
あと、もう少し……
だけど、あたしはそこで足を止めた。
だって──
公園の入り口には、1台のバイクが止まっていて、
公園のベンチには、昼間泣きながらその背中に抱きついた、見覚えのある人影があって……
「……先輩」
あたしが公園に足を踏み入れると、それに気付いた先輩は両手で自分の頭を抱えてしまった。
「……どうして? どうして先輩が、ここに?」
「それはこっちの台詞だよ」
深い溜息をひとつ吐きながら、先輩が一瞬だけ、目の前に立つあたしを見上げた。
……だけど、またすぐに先輩は俯いてしまって。
「終電の時間まで待って、それでも帰ってこなかったら、今度こそ潔く美夕ちゃんのことを諦められると思ったのに」
ゴクリと唾を飲み込んで、先輩は続けた。
「それなのに……どうして帰ってくるんだ?」
両手で顔を覆ったままそう言った先輩の声は、震えていた。