ウソ★スキ
しばらくすると、あたしたちの耳にも双子の噂が届くようになった。


キラとソラは、あれからすぐ、4人で旅行したあのペンションで『発見された』らしい。


……噂の内容は様々だった。


2人で無理心中を計ったとか、

片方が相手を殺そうとして失敗したとか、

近くの滝に飛び降りたとか。



一時期はかつての掲示板も盛り上がりを取り戻して、そんな噂で大騒ぎ。

だけど、いくらそんな噂に耳を傾けても物騒な話しか聞こえてこなくて。

それが辛くて、苦しくて……。


……そんなこと、聞きたくない。

あたしは出来る限り双子の話題から逃げ続けた。



だけど、そんな噂にはふたつだけ共通点があった。


ひとつは、発見された時、2人とも『救急車で運ばれるような状態』だったということ。


そしてもうひとつは、2人を発見したのは管理人さん夫妻で、

奥さんは一連の騒動のショックで白髪になってしまったということだった。



……だけど、真相は誰にも分からない。



しばらくすると、キラたちの住んでいた家は売りに出され、両親は遠くへ引っ越して行った。

あたし達の住む町に一番近い、双子の両親にとって出発点となった思い出深いカフェ1号店は、「リニューアルオープン」という名目で遠くへ移転してしまった。


あたしも、あれから一度だけペンションに行ってみたけれど、そこに人影はなく、周囲は雑草が腰の位置まで延びていて、長い間そこに誰も立ち寄っていないということを物語っていた。




──2人のことを知る術は、もう、何もなくなってしまった。






< 561 / 667 >

この作品をシェア

pagetop