【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
「秀政、入って来い!」


その声と同時に秀政が転がり込んできた。


わたしはまだはだけたままだった胸元を急いで掻き合わせたけど、秀政はいち早くそこに目が行ったらしい。


わたしを凝視したまま立ち尽くしている。


「その女、お前にくれてやる」


「……迦陵は物ではありませぬ」


信長さまはふんと鼻で笑うと、

「さっさと連れて行けっ!」

と吐き捨てるように叫んだ。


「かしこまりました」


秀政はまだ何か言いたげだったけれど、わたしを促して立ち上がらせた。


「では、失礼致します。誰か片付けに寄越しましょう」


信長さまは寝転んだまま片手を上げ、早く行けと言うようにその手をひらひらと振った。


秀政が先に部屋を出ると、信長さまがわたしを呼んだような気がして振り向いた。


信長さまはわたしを見つめていた。


「息災でな、迦陵」











< 174 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop