【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
「俺とお前は同じだからだ」


殿は城下をじっと見据えながらそう言った。


「同じ?」


「お前の眼。ここを見ていても、その実もっと先の方をとらえている。ここにいるようで、お前はここにはいないのだ」


「……」


「俺も、この清州ばかりを見ているわけではない。もっと遥か先の、天下を見ている。天下とは何か」


殿はわたしの方へと視線を戻した。


「天下とは、すなわちこの国。日本だ」


殿の気迫に気圧され、わたしは息を飲んだ。


「そして、世界」


「せかい?」


聞きなれない言葉に首を傾げるわたしを気に留めることなく、殿は言葉を紡いでいく。


「世界にはさまざまな国がある。明だけではない、西洋にはもっとたくさんの国があって、それぞれの国に王がいる」


「王とは、天子さまのような方ですか?」


「この日本では帝は神だ。だが王は神ではない。人だ。人が人を統治する。それこそが俺の求める支配」


そこで殿は一旦言葉を切り、再び城下を見下ろした。



「俺はこの国の王になる」









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