その日、僕は神になった

四章

 扉を二回ノックする音に気付き、私は机の上に向けていた視線を上げた。誰だかは分かっていた。そしてその人物もまた、突然の来訪者の正体が誰なのかを、私が気付いていることを分かっていたはずだ。
『東の神秘書、レイチェル君、ちょっといいかな?私だ、カムイだ』
 予想通りの声が脳内に響き、私は声を出して答えた。
「どうぞ、お入りください」
 扉が静かに開き、満面の作り笑いを浮かべた彼が足を踏み入れた。
「お忙しいところすまないね、少々お時間を頂けないかな?」
 彼はそう言いながらも、私が返事を返す間もなく、自ら椅子を出し座り込んだ。
「今立て込んでいるので、またの機会にしてもらえませんか?」
 彼は唇の端を持ちあがるだけの笑顔に切り替え、私の質問を無視した。落ち付いて、冷静になるのだ、彼のペースに巻き込まれてはいけない。
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