汗が頭皮を伝っているのが解ります。本官はままよと最初の一筆(ひとクレヨン)を走らせました。


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「三塚巡査……これは酷い」

確かに。

本官にだって解っています。

「これは後期バルビゾン派を意識した画風なんだが」

しかし諦めの悪い本官は、唯一知っていた美術用語を持ち出します。

勿論それが何を指すのかも知りませんが、難しいことを言ってケムに巻くつもりでした。

「バルビゾン派? ミレーとかの? これが『落ち穂拾い』の画風ですか?」

クロブチ捜査官に突っ込まれました。彼女は滅法美術史に長けているようです。

そうです。最早『一巻の終わり』です。


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