「解体済みって……そんな…」


 彼女は肩を落とし、まるで自分の事のようにガックリと項垂れた。


「そう、もう跡形も残ってないんだよ。ところで君はそのお金、どうしたんだい?」

「私が弘二に奪われたのは1千万ちょっとだったんですが……」

「1千万! それはキツかったねぇ」


 女の子がこつこつと年月を重ねて貯えてきたそのお金は、彼女の人生そのものだったに違いない。

それを奪われた悲しみは、当人以外には想像も出来ないだろう。


「ええ。でも一億円なんてお金は私には分不相応ですし、その分を除いて寄付しようと思って……」

「えええぇぇえっ! まさかっ!」


 8千万以上を寄付したというのか。なんて出来た女性だろう!


「……たんですけど、半分にしたんです。みみっちいですよね」

「そんな事無いよ。立派だよ! 俺には出来ない」

「でも……私を救ってくれた貴方が、なんの恩恵も受けられなかったなんて……ごめんなさい」


 彼女はベッドに手を着いて頭を下げた。俺に渡してさえなければ、彼女が3億というお金を手に出来ていたというのに。


「そんな、いいんだよ。折角貰ったクジを無くしたのは俺なんだし」


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