W・ブラッティⅡ
 悠介が体を明け渡した。今度は慎次の人格が現れる。


――どうやらまた事件の始まるようだぜ。今度は奴の遺産で一悶着が起きるそうだ。


『これから一ヶ月間……名前だけでどこにいるか分からない人から紙を手に入れるって無茶じゃない?』


――多分、俺らみたいに二重人格なり何なりの特徴があるはずだ。問題はどこで会うか、だよな。


『紙の奪う手段は一切問わないって……一体何するんだろう?』


――少なくともお前が最も苦手な戦いもあるってことじゃないか?


『はあ……これからどうなるんだろ?とりあえず北海道の旅行楽しもう……ひとときの現実逃避だ』


 本当はこれじゃまずいってことは分かってるが、本能がそれ以上の思考を止めようとしている。少なくとも今は四日後に控えている旅行を楽しむことに専念しよう。
慎次は手紙を旅行バックの中に入れてファスナーを閉めた。せめて今は思い出さないようにしよう。と思い、一番奥にしまった。
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