恋文〜先生へ綴る想い


「えー、だってうちら前にもふたりで出かけたことあるよ?」



私が抗議すると、



「あー、あの時は誰もいない海だったからよかったけど…、ライブ会場なんか行ったら、誰に会うかわかんないだろ…?」


「あ…、そっか…」


「それはちょっとマズイよな」


「……」



私は何も言えなくなってしまった。



「じゃあ、いいよ…。誰か他の人と行くし」



私はしゅーた先生の手から、チケットを取り返そうとした。


けど、しゅーた先生はチケットを放そうとせず、こう言った。



「とりあえずこれ、もらってもイイ?」


「え…」



しゅーた先生の言葉に隠された彼の気持ちはわからなかったけど、


私は先生が何とかライブに来てくれるんだろうと勝手な想像をして、



「わかった…。じゃあ、できるだけ一緒に行けるよう、何とかしてくださいね」



そう返事をした。



しゅーた先生はチケットをスーツの内ポケットに大事そうにしまうと、



「よし、じゃあ今日も地獄の特訓を始めますか」



そう言って、いつものように英会話のテキストを広げた。




< 120 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop