小悪魔男子
誰も居ない保健室に着くと、目立つ場所にあった消毒液と絆創膏を手にして治療をしようとした。
だけど、痛そう と少し後ずさりするさなちゃんに思わず微笑む。
大丈夫だ と言ってやると、少しホッとした様な顔を見せてくれる。
彼女と居ると
少しずつ。
本当に少しずつだけど
本当の俺が戻ってくるんだ。
嬉しさを覚えつつ、最後の絆創膏を貼り終えて立ち上がると
「…ねぇ。膝、すりむいてるよ」
と右膝を指さしてくる。
平気だ と言って笑う。
その奥で、なんで気づくのか。自分のケガよりも俺のケガに反応してくれるのか。心の中をじわじわと”愛しい”が侵食してくる。
自分の方が痛いくせに。
そんな顔で見ないで。
そんな優しい声で気遣わないで…。
せっかく蓋をしたと思っていた気持が こんな些細な事で
小さな隙間から漏れだしてくるから。