小悪魔男子
話しかけても返事は返って来なかった。
どうすればいいのか分からなくてあたしも黙り込む。
「……」
キャッキャッ
お父さんに肩車をされ、笑っている小さな男の子を見つめる。
側では優しそうなお母さんが笑いかけていた。
すると、大和が口を開いた。
「…俺もあの位の年の頃は、よく肩車されてたんだ」
夕日に染まる顔で、微笑みながらその家族を見つめている。
「もうこれ以上大切なモノを失いたくないのに。
…さな、あいつの所に行くの?」
「あいつって…和樹?」
「告白されたんだろ?ずっと…近くで聞いてたから」
「……うん」
そう答えた途端、大和はあたしの腕を掴んで何処かへと連れて行く。
その歩く早さは、付いていけなくなりそうな程だった。
「大和…ッ!!どこ行くの!?」
そんな問いにも答えてくれない程彼は必死で。
「2枚下さい」
また口を開いたのは、観覧車の前のチケット売り場だった。