薔薇姫-another story-
「…マレッタ様」
私が呼びかけても、返事はない。
私はただ、マレッタ様の揺れる後ろ髪を見ていた。
マレッタ様に手を引かれるがままにして辿り着いたのは、広い庭。
咲き乱れる紅涙花が目に入り、あの日の光景が思い出される。
そこで、マレッタ様はふと足を止めた。
「…マレッタ様?」
またも反応がなく、もう一度口を開こうとした時、マレッタ様が声を張り上げた。
「どうしてですの?」
私に背を向けたまま、マレッタ様は強い口調で続けた。
「どうして、今更わたくしの前に現れるんですの?」
その時、私は気づいた。
「覚悟をしましたのに!どうして、覚悟を揺らがすようなことをなさるんですの?」
マレッタ様の肩が…微かに震えていた。
「ロゼリナータ様はっ…きゃ!」
私はマレッタ様の肩を掴み、無理やりこちらを振り向かせた。
その紫色の瞳から零れ落ちる―――涙。