薔薇姫-another story-

レオには、あの子が必要なんだ。


そう思った俺は、意を決し、レオをけしかけた。



本当に大事なら、掴んで離すんじゃない、と。



俺の兄貴は確かにあのとき、大事なものを掴んだんだ。


けどその手を、兄貴は離した。


…それがいけなかったんだ。



間違っていたのは誰でもない、この俺だ。


息子の幸せを願うなら、いつまでも過去のことを悔やんでる暇なんかない。



裏切り者だなんて、言わせない。



レオが魔王就任の演説の日、再度巡り逢う運命だったかのように、少女は再び魔界へ現れた。


レオが演説の最中だということに気づかず、少女が大告白をしたときには、思わず笑いそうになった。



けど、俺が見たかったレオが、そこにいた。


生き生きとした表情で、笑っている。


その姿が、俺の生きる価値になる。



演説を終えたレオに、真っ先に拍手を送ったのは俺だった。


"ごめん"と"ありがとう"の意味を込めて。



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