図書館で会いましょう
駅前の噴水に到着した由美は噴水の水で少し冷えた空気の流れを感じた。すると、
「遠山さん。」
声のするほうを向くと北澤が走って近づいてきた。
「待ちましたか?」
「いいえ。今、着いたところですよ。」
北澤の頬は汗が流れていた。家から走ってきたのだろう。
「良かった。じゃあ行きますか?」
「はい。」
由美は北澤と同じ方向に歩き始めた。北澤の家は歩いて5分程度のところにあった。路地を通っていったせいかそれ以上に遠く感じるが、時計を見るとそれほどでもなかった。北澤の家は少し年期の入ったマンションとアパートの中間のような三階建ての建物だった。少し前の映画にも出てきそうな趣がある。一瞬、由美はえっと思ったがよくよく見ると北澤に雰囲気が似てるようにも思えた。少し狭い入り口から階段を昇る。階段も二人並んでは歩けない幅だったので由美は北澤の後ろをついていった。
北澤の部屋は三階、一番上だった。少し塗装がはけたドアを開けると『ギイッ』と鈍い音が響いた。
「どうぞ。」
北澤の言葉に由美は少し頭を下げ、中に入る。部屋に入ると外観からはあまり想像がつかないぐらいの広さだった。部屋は三室ぐらいあり、仕事場にしてるだろう居間には奥行きが充分だった。
「広いですね。」
由美は部屋を見渡すように言った。
「暗室とか必要なんでね。案外、居住スペースはないですよ。今、お茶出すんでそこ座ってください。」
四人分の椅子があるテーブルに誘導される。
「あっ、おかまいなく。」
おそらく北澤には由美の声は届いていないだろう、北澤はそそくさと台所のほうへ消えていった。
「へぇ…」
壁には色々な風景の写真が無造作に貼り付けられている。どれもこれも素晴らしいものばかりだった。
「すごいな…」
由美はそれらに見とれていたが一つ違和感を感じた。
「人が誰も写ってない…?」
そう。北澤の写真には誰一人、人物が写っていない。人物を撮ったものが一枚もなかった。
「遠山さん。」
声のするほうを向くと北澤が走って近づいてきた。
「待ちましたか?」
「いいえ。今、着いたところですよ。」
北澤の頬は汗が流れていた。家から走ってきたのだろう。
「良かった。じゃあ行きますか?」
「はい。」
由美は北澤と同じ方向に歩き始めた。北澤の家は歩いて5分程度のところにあった。路地を通っていったせいかそれ以上に遠く感じるが、時計を見るとそれほどでもなかった。北澤の家は少し年期の入ったマンションとアパートの中間のような三階建ての建物だった。少し前の映画にも出てきそうな趣がある。一瞬、由美はえっと思ったがよくよく見ると北澤に雰囲気が似てるようにも思えた。少し狭い入り口から階段を昇る。階段も二人並んでは歩けない幅だったので由美は北澤の後ろをついていった。
北澤の部屋は三階、一番上だった。少し塗装がはけたドアを開けると『ギイッ』と鈍い音が響いた。
「どうぞ。」
北澤の言葉に由美は少し頭を下げ、中に入る。部屋に入ると外観からはあまり想像がつかないぐらいの広さだった。部屋は三室ぐらいあり、仕事場にしてるだろう居間には奥行きが充分だった。
「広いですね。」
由美は部屋を見渡すように言った。
「暗室とか必要なんでね。案外、居住スペースはないですよ。今、お茶出すんでそこ座ってください。」
四人分の椅子があるテーブルに誘導される。
「あっ、おかまいなく。」
おそらく北澤には由美の声は届いていないだろう、北澤はそそくさと台所のほうへ消えていった。
「へぇ…」
壁には色々な風景の写真が無造作に貼り付けられている。どれもこれも素晴らしいものばかりだった。
「すごいな…」
由美はそれらに見とれていたが一つ違和感を感じた。
「人が誰も写ってない…?」
そう。北澤の写真には誰一人、人物が写っていない。人物を撮ったものが一枚もなかった。