ふたつの指輪
梨恵さんがフーゾクをすることを阻止できなかったことを、きっとすごく悔やんでる。


だから、あたしに関わることで、その穴埋めをしたんだ。



「だから、指名入れてくれたんだ……」


「……ん?」


つぶやくあたしに、すぅっと眉を上げて視線を投げる尊さん。



どうして指名を入れてくれたのかなんて、しつこく聞いちゃって。


あたしったら、恥ずいヤツ。




「あたしがあのバイト初めてだって聞いて、指名してくれたんでしょ……」




朝、あんなにムキになってバイト行くなって言ってくれたのも。


あれは、あたしを通り越して、梨恵さんに言ってたんだね、きっと。



「……おまえは間に合って良かったな」



尊さんは腕を伸ばして、うつ向くあたしの頭を1回くしゃっとなでた。
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