ふたつの指輪
「死ぬかもしれない、なんて、立派な脅しだぞ。

そんなことを言う親が、おまえのことを考えてると思うか?

――結局、自分のことしか考えてないんだって、ちょっと冷静になればわかるはずだ」


「………」


黙ってうつ向くあたしの肩に、ふとあたたかい手が置かれた。


「――心配か?」

「うん」

「そうだろうな……。当然だ」


思いがけない、やさしい声。


「……」



「お母さんを愛するな、見捨てろって言ってるじゃないからな。

お互い一人の人間として、自立しろってことだ。

依存しあう関係じゃなくてな。

そうじゃないと、おまえらの関係は、いつまで立っても不健全なままだ。


……それには、しばらく距離を置いてみるのが一番なんだよ」


ポンッと肩を軽く叩く。
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