ふたつの指輪
今週末は高校の卒業式だし、もう独り立ちしていい時期なのはわかる。


だけど、ママとあたしはこれまでずっと二人で――二人っきりで――暮らしてきて。

文字通り、お互いがお互いを支えてるような関係だったから。

その生活しか知らないから。


出ていくってことにリアリティがないだけ。



あたしが出てったら、ママはあの部屋にひとりぼっちになっちゃう。

ここまで育ててもらって、今ママがああいう状態で、そういうのが許される?




「明日は多分帰りが遅くなるから、先に寝とけ。

メシも適当に食っとけ」


尊さんは突然そう言うと、ここの近くのスーパーへの地図を書いてくれた。


ついでに、最寄り駅までの地図も。



「おまえ、金あんのか?」

「バイト代入ったから、あるよ」

「――それも、生活保護と相殺される?」

「……うん」

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