ふたつの指輪
「んじゃさ、お店にちょっと顔出すね。

オレ夜バイトだけど、昼は空いてるから。

瞳衣の顔、ひさびさに見たいしね」


甘い言葉。



「ありがとう、待ってる」

「じゃ、明日ね」

「うん、待ってる」

「じゃあね、おやすみ、瞳衣」

「おやすみなさい」


携帯を切るまでの間。



尊さんのことはあたしの頭からすっかり飛んでいた。





おそるおそる尊さんの方へ振り向く。


「魁人くん、明日、バイト先に顔出すって」


「……そっか。良かったな」


尊さんは、”しょうがないな”とでも言うように、ちょっぴり苦笑ぎみにうなずいた。
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