ふたつの指輪
「あの人、バカよね」


窓の外を見ながら、不意に瞳衣が言った。



「お金なんか、どうにでもなったのに。


……あの人も15歳で家を出てからお金ですごく苦労してたんだ。

だから、自分でも、どうしてそんなにお金を求めてるのかわからないままに、ただただお金ばっかり追いかけてた。

”お金イコール自分の力”みたいに思ってるところがあったの。

だから、いくらあっても不安だったんだね。


――かわいそうに」


「……」



俺は黙って、瞳衣の視線を追いかけた。


二羽の鳥が、近くの木の枝に並んで止まってた。
< 314 / 331 >

この作品をシェア

pagetop