ふたつの指輪
2月入ってすぐの頃のことをあたしは思い出してた。



「ねぇ、春休み、何か予定ある?」


高校も卒業で、就職も飛んじゃったあたしは、春休みの予定はバイト以外はゼロ。

だから、魁人くんが、あたしに時間を割いてくれないかなって思ってた。


魁人くんは忙しいから、普段あんまり会えないし。



そんなあたしに、魁人くんは突然言ったんだった。



「瞳衣、オレ実はね……今度長期のバイトに行けることになってさ。


給料は安いけど、スキーもスノボもすべり放題なんだよね。

だから、1ヶ月ちょっとくらい、こっちにはいないんだ。


しばらく瞳衣を放ったらかすことになっちゃうけど……

ごめんね」



罪のない笑顔をなめらかな白い頬に浮かべて。

魁人くんは言ったっけ。
< 51 / 331 >

この作品をシェア

pagetop