ふたつの指輪
「早く部屋から出て」


梨恵さんは、小声であたしにささやいた。


「あとはまかせて」


後ろ髪を引かれながら、あたしは急いで靴を履いて、ドアから飛び出した。


「瞳衣!待ちなさい!」


背後から掛けられる声に、心臓をぎゅっと握られたように感じながら、あたしは尊さんの車までダッシュした。




「はぁ~……」


震える手で車の後部座席のドアを開けると、あたしは肩で息をした。

なぜか、涙があふれそうになるのを、何とかこらえた。


「なんで後ろに乗ってんだよ」


尊さんは、バックミラー越しにあたしを見る。


「……梨恵は?」

「ママと話すから、先部屋出てって言われて」



そう言ってる間に、走ってくる足音がして、助手席のドアが勢いよく開いた。

梨恵さんだ。
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