ふたつの指輪
照れ照れで話すあたしを、半ば苦笑しながら眺めてる。



「でも正直、どうしてあたしなんかに声かけてくれたのか、わかんないんだ」


あたしのつぶやきに。


尊さんは、ふと怪訝そうに首を傾げた。



「そいつ、おまえの現状知ってんのか?」

「現状って?」

「お母さんが失業して、生活保護で暮らしてて……ていう」

「ああ……多少は。

母子家庭だっていうのは知ってるよ。

……でも、現状についてはあんまり話してない」

「なんで」

「だって、すごい貧乏で、あんなボロアパートに住んでるなんて知られるの、恥ずかしいもん」



あたしはボロアパートに住んでるシンデレラみたいなもん。

魁人くんと会うときだけ、姫気分でいさせてもらえるんだから。



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