Magic Academy ~禁書に愛された少女~
机の右側に水晶をセットする場所があったので、校門で受け取った水晶玉をそこに置き、イヤホンをセットし、プレイボタンを押す。

「ようこそ、アマダスへ。私はこの学校の学長…ザザ…」

「あれ?」

水晶に表示される映像とイヤホンから聞こえてくる音声にノイズが入る。水晶を使った録画映像に、こういった症状が起こることはないはずなのに、ノイズはどんどん酷くなり、映像が薄れていく。

「そ…ら……」

自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。耳を澄ませて聞いてみる。

「早く、ふう…とい…そら…」

途切れ途切れの言葉ははっきりとは聞き取れなかったが、確かに、自分の名前を呼んでいた。しかも、学長と名乗っていた女性とは明らかに違う声が。

そして、消えていた画像がぱっと映る。

たくさんのマジックアイテムがひしめき合う中に、1冊の本が置かれていた。

「そら、俺はここで君を待っている。早くきて、封印をといてくれ」

はっきりと声が聞こえた。その瞬間、1人の男性の姿が脳裏をよぎった。
真っ黒い短髪に、ルビーのように真紅の瞳、端整な顔立ちに細身だがしっかりとした体つき。

「…っはっ!」

ぶるっと身震いをする。見たことのない男の人。だが、見覚えのあるような気もする。

気づけば、水晶の映像も音声も元に戻っていた。まるでさっきまでのノイズはまるでなかったかのようだ。

「それでは、新入生の皆さん。まずは進級を目指して頑張ってくださいね!」

学長の言葉と共に、水晶の映像が消える。


さっきの映像は一体…それに、あの言葉。私の名前を呼んで、待ってるって言ってた。


「待ってるって…どこで?」

見たこともない場所の映像が映し出されていた。そらが、今までの記憶をどれだけ思い返してみても、まったく思い当たる場所がない。

「はい、みんな。おはよう」

そらの思考を遮るように声がした。
めがねをかけた、若い男性が部屋に入ってきたので、そらは男性の方を向いた。
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