禁じられた遊び

桃香Side④

小花さんが生徒会室を飛び出して行った

「九条、何で叩いた?」

勇人さんが、克波君の胸ぐらを掴んだ

「ああしなきゃもっとひどいことを口にしてただろ」

克波君が苦しそうな表情で、口を開いた

克波君は、小花さんのことが好きだから、小花さん以上に心を痛めているはず

「桃香を傷つけないために……か
お前のその行動が、小花を傷つけているって気づけ……」

「さっさと追いかけろよ
勇人さんの女になったんだろ?
俺には関係ねえよ」

克波君は勇人さんの手を振り払うと、制服を整えた

「ちっ」と勇人さんは舌打ちをすると、生徒会の部屋を出て行った

「克波君も追いかければいいのに
今なら、間に合うよ?
勇人さんじゃなくて、克波君の……」

「馬鹿言うなよな
折れた足で、追いつけるかよ」

克波君はどかっと椅子に座った

そっか

平然としているから、忘れてた

怪我…してたんだっけ

痛いのに、歩くのだって辛いのに

小花さんに心配かけたくなくて、怪我してないように振舞って…さ

なのに、勇人さんに全部良いところは持っていかれちゃうんだね

「痛かったかな」

克波君が手のひらを眺めながら、呟いた

「ずいぶんと良い音がしたからね」

「だよな
でも、聞きたくなかったんだ
小花からあれ以上、酷い言葉を聞きたくなかった
絶対さ、あいつ、後悔すると思うんだ
傷ついて、心を痛めてさ
一人のときに、泣きそうな顔をして……」

「そう言えば良いのに…
小花さん、誤解してるよ」

「いいんだよ
俺が今更、言える義理かよ
『九条家の男はイカれてる』んだからさ」

克波君がにっこりとほほ笑んだ

克波君の目だけは、涙をためて潤んでいる

< 138 / 200 >

この作品をシェア

pagetop