禁じられた遊び
「あのぉ……それで、克波君は途中で拾っていかないんですか?」

あたしが恐る恐る質問をしてみた

勇人さんは、「あ」と小さい声を漏らすとすぐに喉を鳴らす

「いいんだよ
あいつに乗れって言ったって、乗らねえよ」

「え? だって骨折してるんですよ?」

今、絶対に克波君のこと忘れてたでしょ?

完全に、脳から出てたんじゃない

「くだらねえ」

「忘れてたんじゃないですか?」

「くだらねえんだよ
克波は骨折を隠しているんだ
車に乗れって言ったって乗らねえんだよ」

いや…痛いって言ってたし、乗ると思うけど

だって歩きで、行くって何分かかるの?

車で15分かかるんだから……徒歩だったら

「克波だって馬鹿じゃねえ
地下鉄なり、タクシーなり使うだろ」

「そっか」

お金があるんだから、使うか…

あたしだったら、歩いちゃうけど

歩けない距離じゃないなら、お金を使いたくないから歩いちゃうけど

そっか
そうだよね

克波君も勇人さんもお金持ちだから、節約とかしないか

「…えっと、じゃあ、あたしたちはどこに向かってるんですか?」

「あ? マンションだけど」

「だって、勇人さんの家には小花さんがいるんですよね?
そこにあたしたちがお邪魔するわけにはいかない…ですよね?
あれ? お邪魔しちゃうんですか?」

勇人さんがポケットから単品の鍵を出した

「ここを使うか」

「ここ?」

「家具とか…何もねえけど…最低限のものは用意してあるはず、だ」

「え?」

何で、そんな不安そうな言い方?

「勇人様と桃香ちゃんの新居ですか?」

「違うだろ」

テツさんの突っ込みに、勇人さんが即答した

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