ワイビーニュー


リソースタウンでの生活を始めてから数ヶ月が経っていた。

リソースタウンでは資源が有り余っているため、肉体労働をする者は皆無である。

街の創始者であるテレポート男は、鍋島という名だった。

彼はシステム資源を無限に増やす術を体得していたのである。そしてユキと同じように迷い込んで来た人々に優雅な生活を与えていたのである。

農作業はシステムロボのアグリが行っていたし、建築はシステム資源が上手いこと作用していたし、情報通信技術もシステム資源が上手いこと作用していた。人々は一日中ぐうたらしたり、BALで雲の上まで登って遊んだりしていた。

鍋島は毎日ユキに会いに来て、口癖のようにいった。

「もう自分の肉体を使って働かなくて良いのですよ。なんと素晴らしいことでしょう。」

しかしユキは有り余る余暇を享受せず、アグリから仕事を分けてもらい、せっせと夏みかんの栽培に明け暮れて、暇があれば走って足腰を鍛えていた。

鍋島は自分の作った街に自信があるため、そんな彼女を見て不満げだった。

「夏みかんはロボットのアグリにやらせたらいいじゃないですか。走るのもやめてBALを使えばいいじゃないですか。」

「うっさいわね、海隊は資源が枯渇した中頑張っているのに、私だけ遊んでられないでしょ。元の世界に帰る方法を早く見つけなさいよ。」

「元には戻れませんよ。戻る必要も無いですしね。こんなに便利なのに。」

次第にぐうたら市民の中にもユキに興味を持ち始め、一緒に夏みかんを育てたり、走ったりする者が出てきた。

「走るって楽しいでしょ」

一同走りながらうなずいた。

その様子を土手からこっそりと見ていた鍋島はヒステリックにはなくそをBALしてその集団にぶつけようとしたが、北風にあおられて自分のおでこに引っ付いた。

彼はおどろき土手から足を踏み外して川におっこちて大怪我をした。そして熱が出て寝込んでしまった。

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