共鳴り

報われないモノ

「なぁ、頼みあんだけど。」


突然の、清人の言葉。


いぶかしげに眉を寄せると、彼はポケットから一枚の名刺を取り出し、俺へと差し出した。



「…彩、って?」


レナちゃんと同じ“アイズ”と店の名前が刻まれ、真ん中には大きく“彩”と一文字だけ。


これの意味するところがわからへん。



「誰これ?」


「コイツ、次のターゲットにしようと思ってさ。」


「…は?」


仮にも、レナちゃんと同じ店の子やん。


そいつを狙うってことはつまり、ヤッて風俗に落とす、ってことやろ?



「ちょっ、どういうこと?」


「こいつさ、すんげぇ馬鹿なんだよ。」


清人は唇の端を上げた。


アイズに飲みに行った際、この彩って女はレナちゃんの隙を突き、清人にこっそりと名刺を渡したのだと言う。


自分たちの関係を知ってるはずなのに、それでもしたたかに言ったそうだ。


あたしと寝ましょうよ、と。



「…で、俺に頼みって何?」


「一緒に飲みに行って、この女指名してくれりゃ良いから。」


ひどく困惑してしまう。


だって、レナちゃんの前やねんで?

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