共鳴り
レナちゃんと、そして一緒に居る男は多分、噂のホストやろうけど。


彼女は目を逸らしたが、決定的やった。



「レナちゃん、どう思う?
ジルくんさっきからめっちゃ機嫌悪いねんでぇ?」


誰も言葉を発しない中、俺は笑う。


清人のためにもレナちゃんのために、もうお互いを突き離してやらな可哀想やん。



「何や、お前らいつの間にか終わっとってんな。」


言葉に反応したのは、一歩後ろで静観していたホストらしき男やった。


ぴくっと眉を僅かに動かした程度やけど、清人も多分、それには気付いたやろう。


あからさまに肩をすくめて見せれば、「行くぞ。」と清人の言葉。



「レナちゃんも新しい彼氏と仲良うね。」


そんな言葉を残し、俺らは立ち去った。


清人が振り返ることはなく、その背中はやっぱり寂しげに見えた。


いつかレナちゃんは清人のことを苦しめるって、俺が一番最初に感じたことは当たりやってん。


まるで俺と理乃みたいで、いたたまれなくなりそうやけど。


それでももう、傷つけ合うくらいなら離れることで楽になれることもあるねん、って。



「今、どんな気分や?」


「わかんねぇけど、あんま良い気分じゃねぇな。」


そして清人は顔だけで振り返り、「レナ、あの男とヤッてんのかな?」と笑う。


怒ってるわけでもなく、ただ悲しそうな顔を隠すように見えた。


ちっちゃな子供が傷ついてるみたいで、俺はただ何も言わず、口元だけを緩めて見せた。

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