共鳴り
「下に集まってるみんな、何だかんだでジルくんに助けられてるから。」


「…助けられてる?」


「金の段取りしてもらったヤツも居るし、執行猶予中で動けない代わりにジルくんが動いてくれたり。
とにかくみんな、このまま逃げるように死なれちゃ後味悪いと思ってんだ。」


アイツ、そんなことまでしてたんかい。


肩をすくめる俺に、国光さんは言いながら、先ほど差し出してくれたはずの缶コーヒーのプルタブを開け、それを流し込んだ。



「てゆーか、言い出したのは嶋さんなんだけどね。」


「…嶋さん、が?」


「てめぇら少しは考えろよ、ガキにケツ拭いてもらって喜んでんじゃねぇぞ、って。
だからみんな、慌てて集まって、下で右往左往してんの。」


笑ってしまう。



「なのにさ、誰も病室に近づくんじゃねぇぞ、って言い出して。
めちゃくちゃなこと言いながら、何かさっきからすごい怒ってるから、俺は逃げてきたんだけど。」


そして思いついたような顔をして、自らのポケットの中に入れていたものを、俺のシャツのそれに忍ばせてくれる。


視線を落とせばそれは、国光さんにとっては煙草よりも携帯よりも、財布よりも必需品。



「…ガム、くれたの初めてやね。」


「俺も人にあげたのなんて初めてだよ。」


じゃあ何でくれたんやろう。


少し呆れたように笑いながら、俺は宙を仰いだ。



「嫌な世界だけどね、俺らだって血が通ってないわけじゃないよ。」


「わかってるよ、俺、ちゃんと。」


言うと、彼は手をヒラヒラとさせ、背を向けた。


清人が目を覚ましたらきっと、事態は好転してくれると願う。

< 265 / 339 >

この作品をシェア

pagetop