共鳴り
疲れ切った体を押して、清人の病室まで再び戻った。


コンコンとノックをし、返事も聞かずに扉を開け、やる気なく視線を上げたその瞬間、我が目を疑った。



「…え?」


誰もいない。


急いで部屋番号を確認したが、確かに“512号室”と書かれているし、ってことはどういうことなのか、わからない。


清人が目を覚まして小一時間と経っていないのに、トイレとかに行くのは不可能やろう。


おまけにレナちゃんまでいないなんて。



「…どういうことやねん…」


ひどく頭が混乱する。


思い返してみれば、先ほどのアイツの言葉も引っ掛かるし、何よりふたりは何かを決意したような目をしていた。


焦ったように俺は携帯を取り出し、通話ボタンを押す。



「嶋さん、大変やねん!
今すぐ清人の病室来てや!!」


『おい、落ち着けよ。
言ってる意味…』


「おらんくなったんや!
清人もレナちゃんも、さっきの今で消えたんや!!」


彼の言葉を遮り捲くし立てると、急に足がすくむほどの得体の知れない恐怖に襲われる。


ふたりが一体何を考えているのか、てか、どこに消えたのかがわからへん。



『落ち着けっつってんだろうが!』


逆に怒鳴られ、俺はびくりと肩を上げた。



『つまりはあの馬鹿共、病室抜け出したってことだろう?』


整理するように、だけども簡潔に、嶋さんは問うてきた。


そして、とりあえずそこで待ってろ、と俺に言う。

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