共鳴り
「仮に捨て子でも、人間って、誰かの腹から生まれるやん。」


「そんなことないわよ。
あたしは神様が作った出来損ないで、捨てるようにこの地に落ちたの。」


だから親なんていないのよ、とのこと。


ホンマ、面白いことを言ってくれる。


レイコさんはそれが当然みたいに言うから、いつもどこからどこまでが嘘かわからへん。



「じゃあ、レイコさんはいくつなん?」


「25って言ったでしょ?」


「5年前から一緒のこと言うてるやん。」


「だって5年前も25だったんだもの。
あたしはね、一生25なの。」


生まれた時から25で、死ぬ時も25やそうや。


けど、5年前から見た目は変わってへんから、それも真実に聞こえるんが怖いけど。



「銀二は本当に馬鹿な子ね。」


そして、いつもそう言って、可笑しそうに笑う。


馬鹿にしているわけでもなく、本当に楽しそうなんや。


テレビの中の別世界の話でも聞いているように、不思議そうな顔して笑う。



「今日は雨になるんだって。
ねぇ、お店まで送ってくれる?」


あぁ、どうりで雲行き怪しいはずやな。


そう思いながら俺は、新しい煙草に火をつけた。



「そういえば、銀二は雨が嫌いだったわよね?」

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