共鳴り
それこそ始めは、ふたりで力を合わせてたと思う。


一緒にご飯作ってみたり、テレビ観て笑い合うこともあった。


なのに、アイツがいっぱい泣くようになったのは、もういつからかは覚えてないけど、寂しさもあったんやろう。


部屋はちょっと築年数の古いファミリー向けのアパートで、清人の時と同じように、リビングにプラスしてそれぞれの部屋があんねんけど。


俺な、清人と違って吐き出すみたいに金使いたいわけじゃなかったし、理乃とふたりで質素に暮らしたかってん。


痛みを伴いながら稼いだ金をそんな風に使いたいわけじゃないし、俺らは普通で良かったんや。


やっぱり結局は、家族に憧れてたんやろうけど。






清人は俺のやりたくないと思った仕事は全部、何も言わずに勝手に引き受けてくれた。


誰も愛さず、求めず、生かされるように生きてたわ、アイツ。


理乃はそんな清人を見て、怖い、と言った。


けど俺は、可哀想で、痛々しくて、どうしても悲しくなるねん。




花穂ちゃんを愛せなかったから。

花穂ちゃんの未来を奪ったから。

花穂ちゃんを殺してしまったから。




多分清人の根底には、そういうのがあったんやろう。


アイツ、毎年毎年花穂ちゃんの墓参り行って、あの子の親に頭下げて。


もう来るな、顔も見たくない、って言われても、決まって4月のあの日だけは、予定開けててん。


償いってな、何をすれば良いんかわからへん。


どこから狂ったんか、何が悪かったんか、って考えるばかりや。


誰もが疲弊した顔してて、心から笑わんくなった。


俺もやけど、それってやっぱ悲しいわ。

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