国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
静かな夜だった--。
夜通し降り続くかと思われた雨は上がり、何の音もしない。
普段なら、虫の声くらいしそうなものだが、今はそれもなかった。
マルスは、寝室の窓から空を眺めた。
月も、星も、見えない。
ただただ、深い濃紺の空が、どこまでも続くのみ。
・・静かだな。
こんなにも、静かで穏やかな時間は、久しぶりだった。
とても、運命の朝を迎える前の晩とは思えない。
・・いや。だからこそ、か。
大事な人間は、すでに脱出させた。
ホーエンと、“あの人”なら、皆を連れて、きっと無事に逃げおおせるだろう。
あとは己の運命を見届けるのみ・・・。
自分の命をかけて、初めて見えるものもあるだろう。
そして、自分の命を懸けなければ、見えないものも・・・。
・・明日の朝、か。
マルスは、そっと目を閉じた。
まぶたの裏に映るのは、レアの姿か、それとも亡き母の姿だろうか。
薄暗い部屋の中で、手燭の炎だけが、太古の昔と変わらずに、ゆらゆらと揺らめいていた。