たんぽぽ
 卒業式が終わり、英男に打ち上げに呼ばれた。全く行く気になれなかったがほとんど無理矢理に連れて行かれた。もしかしたらと思ったが、そこに春華の姿は見られなかった。

 周りのテンションについていけるはずもなく、僕は早々と部屋に帰ってきた。僕はベッドに寝転がり、携帯電話をにらみつける。

 何で鳴らないんだよ。春華は何で電話をくれないんだ。

 それしか頭の中には思い浮かばなかった。

 突然、電話が鳴る。

 僕は体を起こし、春華からか?と、あわてて携帯電話を見る。しかし、そこには「自宅」と表示されている。

 ため息をつき、電話に出る。

 母さんからだった。風邪の心配と卒業おめでとう、という話だった。僕は適当に返事をし、電話を切った。

 結局、春華からの電話はなかった。

 僕にとっては、最低の卒業式だった。僕達の時間は3月12日で止まってしまったのである。

     *

「あいかわらず忙しい▼もうテスト始まってるし(-_-)」

春華から驚くほど早くメールが返ってくる。僕は不思議に思いながらも、寒さに耐えきれなくなり部屋に入る。

生暖かい衣が僕の体にまとわりついてくる。部屋の中は暖房が効いていて僕のかじかむ体をほぐしてくれた。僕は溶けかけた雪がついたジャケットとマフラーをハンガーにかけ、コタツに入る。

「そっか(^^;)ちゃんと勉強してんのか?笑」

十分落ち着いてからメールを送った。

「勉強しないと単位とれないもん(-_-)」

「まぁ落とさないように頑張って下さい(笑)」

 正直ここら辺が潮時だと思った。

 メールを引き伸ばそうと思ったがやめておいた。僕からするとこれだけメールできただけで満足だった。

 きっと次の春華のメールには「うん☆」とか「おー☆」とかの一言だけのメールが来て僕達のメールは終わる…、はずだった。
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