たんぽぽ
 しかし、中学生になり現実を見てしまった僕の中で医者という夢はすぐさま崩れ去ってしまった。

 医学部という超がつくほどの難関な入試、莫大な授業料。

 それだけではなく僕の自分の頭の無さにも早々気づいた。

 きっと諦めなければなんとかなったが、そうするまでの気力が僕にはなかったのが事実である。

 中学生活や部活動の楽しみにも負け、勉強よりも遊びや部活動を選んでしまったのだ。

 僕は自分に言い聞かせた。

 小さい頃にプロ野球選手になりたいと思っていたやつが現実に何人なる?パイロットになりたいと思っていたやつが現実に何人なる?

 それは自分でも逃げているだけとわかっていたがどうすることもできなかった。

 夢を諦めるにしても努力してそうするのと、何もしないでそうするのでは天と地ほど差があることもわかっていた。

 僕が「地」のほうであることも。

 こうして、僕は簡単に医者という夢を捨てたのだった。

 両親には感謝していた。

 あのとき、両親が僕のためにできることはなんでもしてやろうという思いも僕には十分感じていた。人は親の甘やかしというかもしれないが僕にはそれは違うという確信があった。

 ただ僕が逃げてしまっただけだった。
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