たんぽぽ
 わかっていた分、確信をついた言葉に僕はショックを受けた。

「そう思ってたんならもっと早く言えよッ!俺に直接言えよッ!もっと早くッ!」

 僕は自分でも驚くほど大きな声でそういうと自分の部屋に走って戻り、ベッドに飛び込んだ。

 目からは涙が止まらなかった。ふいても、ふいてもあふれてきた。

 少し時間が経ち、冷静さを取り戻して、僕は考えた。

 確かに、母の言うとおりだった。僕にお金がかかっていることもそのためにきっと他の兄弟が我慢していたことも。

 僕が実家に帰ると兄弟達は喜んでくれたが、いつも僕に、いいなぁ、お兄ちゃんは、と言っていた。

 僕以外の兄弟達は地元の高校生、地元の小学生だった。

 兄弟達からすると親元を離れることに強い憧れがあったらしい。

 しかし、みんなをみんな、好きにさせるようには両親もいかなかったらしい。

 一人目の僕でそれがわかったみたいだった。

 このご時世、五人という子供の数はきっとかなり多いほうである。

 その中で僕に私立の学校に行かせ、生活を立てるのはものすごく大変なことであろう。しかも、一番下の弟はまだ生まれたばかりの一歳児、これからお金がかかっていくであろう。

 そこまで生活が苦しいということではないが、僕の父は普通の会社員であったし、母も専業主婦だ、楽な生活ではないであろう。

 良く考えたら僕の両親はすごいと思った。

 両親への尊敬の念は常にもっていたつもりだったが、僕の両親への感謝とか尊敬というものは少し違ったものになっていった。

 自分へのプレッシャーというものに。

 それは別に悪いものではなかった。もっとしっかりしなければいけない、今のままではダメだという自分を戒めるものになってくれた。

 この日の親子ゲンカは僕にとって考え方を変える大きなきっかけになってくれた。

 それは、これからの大学受験への心構えにも大きな影響を与えた。

 大学には絶対に国公立に入ろう。そして、大学に行っても仕送りなどもらわないで一人で頑張っていこう。絶対に浪人はしないでおこう。

 そのためにも少しずつでもいいから今から勉強していこう。

 そう自分に誓った。
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