澄んだ瞳に


私たちが下りる駅は、終点の駅……


いろんな路線の電車が入り交じる駅……


3日前に、あの人に逢った場所の近くの駅……




電車を降り、改札を出ると映画館へ向かって歩き出した……



「日中だからといって、油断は禁物だね……。」


智香も、3日前のことを思い出して、警戒していたのだろう。


あの日は、偶然にも矢崎という男の人に助けられて、難無く事を得たが、そう度々偶然が重なることもないだろう……


「……そうだね。気をつけてないとね……」



そんな話をしながら、私たちは映画館へ続く、大通りに面した道を歩いていた。

街路樹として、均等に銀杏の木が植えられていて、生い茂った銀杏の葉が、夏の照り付ける太陽を防いでくれて、心地よい涼しさを醸し出していた。





映画館手前の大きなビルの前に差し掛かった……



「お気をつけて。いってらっしゃいませ。」


数名の男の人が、頭を深々とさげた。


「……あ〜。」


見送りを受けていた、男の人が、車に乗り込もうとしていた。



「……澪! あの人!!」


智香が突然立ち止まり、指を差した。


私も立ち止まり、智香が指を差す方へ、目を向けた。


「……あっ!」


二人は顔を見合わせた…



「『あの時の……?』」




矢崎 淳


と、名乗る、私たちを助けてくれた人だった……






< 33 / 277 >

この作品をシェア

pagetop