LOVE IDIOT
「っ!?」

急に後ろの方で騒ぎ出す女子達、そして私の隣を全速力で走る『泥棒』。
これは・・・見逃す訳にはいかない。

私の全身の血が巡り出す。





ガラッ!!





私は道場の扉を勢い良く開ける。
目の前の一人に叫んだ。

「ねぇ君!ちょっと竹刀貸して!!」

「ぇ?え・・・お、オレ?」

「そう、君!!早く!!」

「は、はい!」

その子は私に竹刀を投げ渡した。
急な出来事に焦っている。

「ありがとっ!!」

ふと泥棒を探すと、遠くに行っていてほとんど見えなくなっていた。
私は全速力で追いかけた。

「(帰宅部だけど・・・足は速いんだからねっ!!)」

なにも考えず、ただただ走った。
竹刀が少し重い、どうってことないけどね!

問題ナッシング。

「(近づいてきた・・・)アンタっ!!そこで止まれっ!!!」

「!!」

「あっ!!」

しくった、泥棒は止まるどころか速度を増す。
負けてたまるかっ!

小学校の頃、一番かけっこで速くてみんなから褒められた。
だから、一応その誇りにかけてでもあの泥棒・・・つかまえてみせる!

「どけぇっ!」

「きゃあ!!」

「(あいつ、ぶつかっておいて・・・)止まれっつってんでしょうが!!」

心臓はもうちぎれそうで、頭は真っ白だ。

「(あと、もうちょい・・・!!)」

もう3メートルだ、私は足に力を入れる。



あと1メートル。



「っざけんなぁっ!!!」

出来るだけ高く飛び、竹刀を空へと振りかざす。
そして、狙いを定めて。

「ッ!!」





バシイイィィィッ!!!




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