転んだら死神が微笑んだ
太った男「はぐっ。はぐぐっ。ちくしょ〜!はぐぐ。ズ〜ッ!」

あかり「あ。」

さっき女将さんと揉めていた、あの男の人だ。

一生懸命いろんな種類のケーキを、次から次へと口に運んでいる。

女将さん「あらまぁ〜、はしたない。」

女将さんは呆れた声でそう言い放ち、ため息をついた。

都合上、その男の人のテーブルを通過しなければいけなくて、その男の人に近づいて行く。



太った男「ぶっ!!ぐぎゅ!ごほっ、ごほっ!!」



わたしたちに、というか女将さんに気づいた男の人は、突然の来客に驚き、ケーキを喉に詰まらせてむせていた。


太った男「ズーッ!ズズーッ!」

女将さん「そんなにほおばって食べるからですよ。」

太った男「…。」

うつむいて黙ったままだ。

女将さん「あなたは昔からそうなんですから〜。」

太った男「そ、それとこれとは関係ありません!やけ食いですぅ!」

男の人は泣き顔になっている。

女将さん「ま!私たちには関係のないことです。さ、奥のゆったりした席に座りましょう。」

案内する店員さんは苦笑いだ。

あかり「は、はい…。」

太った男「あ…。」

わたしを見た、ようやく視界に入った男の人は、何か言いかけたが、そのまま息を飲んだ。
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