月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「ぜひお願いします」

あたしが横倉の座るスペースを空けようと腰を浮かすと、洋子が

「じゃああたしはこれで…」

と立ち上がった。

しかしその腕を達郎が押さえた。

「キミもここにいて」

一瞬、間が空く。

「ハ、ハイ!」

洋子は目を輝かせながら達郎の言葉に従った。

あたしは眉をひそめた。

達郎は初対面の女性に対して艶っぽい駆け引きをする男ではない。

これは達郎が女性に興味がないとかそういうことではない。

ただ純粋にやらないだけの話だ。

この場合の達郎は、絶対なにかを企んでる。

これは身内と刑事と目付け役の三役をこなすあたしの経験と勘だ。

一体なにを企んでる?

あたしは気になって仕方なかったが、今は横倉に話を訊く時だ。

あたしは簡単な自己紹介を済ませると、話を切り出した。

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