月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
なんでもはじめて事件を解決した時、たまたま缶コーヒーを手にしていたそうで、それ以来癖になっているらしい。

ドラマだったらヴァン・ヘイレンの【ジャンプ】が流れるシチュエーションだろうか。

達郎の視線は一点に集中し、鋭さを増すばかり。

その瞳には強い意志を示す光が宿っているように見えた。

達郎が普段は絶対に見せない、唯一の表情がそこにあった。

「カッコいい…」

呆然とした洋子のつぶやきがもれた時、渇いた音がした。

達郎が缶コーヒーを開けた音だった。

そのまま一口飲むと軽く息を吐いた。

「小山さん」

達郎は洋子を見た。

「ちょっと協力をお願いしたいのですが」

達郎の申し出に洋子は

「はい…」とうっとりした表情で応じた。

今の小山洋子なら達郎に何を頼まれても快く応じるだろう。

あたしの場合と比べるとだいぶ素直だなと、変に感心をしてしまった。

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