イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
抱き締められたまま、今までで一番近い距離から亮の言葉を聞いていた。
注ぎ込まれた言葉に、頭の中が真っ白になる―――……。
「……聞いてた?」
そう聞いてくる亮の声も、どこか遠くから降ってくるようにしか聞こえない。
頭の中では、さっきの亮の告白が何回も何回もリピートされていて……
他の事なんて何も考えられなかった。
「……奈緒」
亮に呼ばれた名前に、やっと現実に引き戻される。
「……おまえが、俺の事好きじゃねぇのはわかってる。
男なのに俺が平気なのは、おまえが俺を男として見てないからだろ?」
亮が落ち着いたトーンで話すのを、緊張しながら聞いていた。
『男として見てない』
……そうなの?
触られても大丈夫なのは、亮を男として見てないから?
お弁当作ってきたりしたのも、亮の隣が落ち着くのも……、
他のことも全部、亮を男として見てないから……?
「……だけど、俺ももう引けねぇし……。
俺の気持ちを知って、おまえが気まずく思うなら……今の関係は解消してもいいと思ってる」
……―――解消?
亮があたしの肩を持って、自分からゆっくり離した。
戸惑うあたしの目と、真剣な亮の瞳が、再び交わる。