イジワルな恋人


「おまえが決めろ」

「―――……」


亮は、今まで見たことのないような『男』の顔をしていた。


「……解消って」


解消したら……

今までみたいに亮に会えないんだよね……?


当たり前に一緒に帰ったりとか……、できないんだよね?


ケータイだって……おそろいにしたのに。

まだ1回もかけてないのに……。

お弁当だって……。


……それに、もしこの関係が解消されたら。


亮はもう、笑いかけてくれない―――……?

そんなの―――……、



「……やだ」


本音が、声になって溢れる。

言葉と一緒に、涙がこぼれ落ちて頬を伝う。


「……ん?」


あまりに小さな声だったからか、亮が優しく聞き返す。


「……、」


子供をなだめるように、優しい微笑みを浮かべる亮を……あたしは涙の浮かぶ目で見つめていた。


……嫌だけど。

亮と会えなくなったりするのは嫌だけど……。


だけど、あたしはきっと亮の気持ちには答えられない……。



だって、ずっと決めてきたんだもん……。


恋はしないって……、決めてきたんだから。



……気持ちに答えられないのに、

亮を引き止める資格なんてあたしには―――……。


< 139 / 459 >

この作品をシェア

pagetop