イジワルな恋人


「解消はしない。

だから奈緒が嫌になったら言えよ。

そしたら解消する。それか……」


話の途中に亮が急に立ち上がった。

そして、あたしの座っているベッドに手をついて、少しかがんで……。


「……亮?」


あたしの耳元で言う。


「……俺のこと好きになったら言えよ。

そん時は俺を本当の彼氏にしろよな」


亮の甘く低い声が……、

あたしの脳を溶かすように響いた。


胸のあたりが苦しくなったのが自分でもわかった。


亮は固まったあたしを見て、意地悪に笑う。


「今日はもう帰んだろ? 

着替えとカバン持ってきてやるから待ってろ」


少し偉そうに言ってから、亮が保健室の扉を閉める。



一人になった保健室に、あたしの心臓の音だけが騒がしく響いていた。


穏やかな風が入り込む保健室で、あたしは一人、心臓が落ち着くのを待っていた。


……ずるい。

ずるいよ、亮……。



絶対わざとあたしをドキドキさせようとしてる……。



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