イジワルな恋人
「何? もう一回言っ……奈緒?」
瞳から涙がポロポロと溢れ出す。
どんどん零れていく涙を、亮が指で拭ってくれた。
亮の優しさに、どうしょうもないくらいに胸が締め付けられる。
……こんなに優しい人を、
あたしなんかに縛り付けちゃダメだ……。
甘えちゃダメ……。
甘えちゃ、ダメだよ―――……。
『離れたくない』
そんなの、あたしのわがままなんだから……。
だから……
絶対に引き止めたりしちゃダメ。
……なのに、声が出ない。
あたしと亮の間を、時間だけが過ぎていく。
何も、伝えられないまま。
「……時間切れ」
「……え?」
亮の言葉を聞いて急に出した声は、間の抜けたような力ない声で、あたしは恥ずかしくなってうつむく。
そんなあたしに、亮は小さく笑った。
「……もう時間切れ。俺が決める」
亮の言葉に顔をあげる。
見上げる先で、亮は優しい顔をしてあたしを見ていて……。
その顔に、また目に涙が浮かんできた時、亮が口を開いた。