イジワルな恋人
「亮? ……って何?!」
覗き込もうとしたあたしの頭を、亮が空いている手で押さえつける。
その手をどかろうと必死になっていると、亮はあたしを横目で見て笑って、
「……弁当、楽しみにしてるよ」
何事もなかったみたいに、そう言って歩き出した。
「もー……」
口を尖らせて髪を直しながら、だるそうに歩く亮の背中を見送った。
教室に入るなり、梓があたしを見てため息をついた。
「……どうかした?」
不思議に思って聞くと、梓がわざとらしくもう一度大きなため息をつく。
「はー。朝から教室の前でいちゃいちゃして……しかも彼氏、桜木先輩だし。
かっこよすぎるし……。はー、うらやましい」
「べ、別にいちゃいちゃしてたわけじゃないよ。
亮が、今日は教室までくるって言うから仕方なく……」
「あー、もう、本当にうらやましい!
あたしも絶対夏までに彼氏作る! 奈緒も協力してよね。
あ、桜木先輩の友達とかさ!」