イジワルな恋人
……なんか緊張する。
こんなアングルからの亮なんて、普段見ないし……。
男の人の髪の毛なんか触った事ないし。
ハチマキを結んでいる手に、亮の少し長い髪がくすぐったく揺れる。
風がふくたびに亮の髪がふわふわ揺れて、あたしの手をくすぐる。
……なんか不思議な気分。
なんか……
後ろからギュッてしたい……。
「……できた?」
聞こえてきた亮の声に、あたしは慌てて返事をする。
「あ、うん!」
あたしの返事を聞いて、亮が立ち上がる。
立ち上がった亮と目が合って……亮の浮かべた優しい笑顔に、自分の胸が高鳴るのが分かった。
……なんで?
なにこれ……。
なんで……、ドキドキしてるの……?
「……奈緒?」
亮を見つめたまま固まっていたあたしに、亮が顔を近づける。
「な、なんでもない!」
近づく亮の顔に、あたしは顔を赤くしてうつむく。
……緊張とは違うドキドキが、うるさいくらいに身体中に鳴り響いていた。