イジワルな恋人


【奈緒SIDE】


「ところで奈緒ちゃん、亮に用事でしょ?」


関先輩に言われて、ジャージのポケットに手を入れる。


「あ、そうだった。はい、これ」


青いハチマキを差し出すと、亮は不思議そうにそれを眺めた。


「どうせ持ってないでしょ? 真ちゃんに言ってもらっといたの」

「……さんきゅ」


亮の言葉に、あたしは微笑んで見せる。


いつも助けてもらったり、支えてもらってるから、少しでもお返ししたくて。


っていうよりも……、

ただ、亮の役に立ちたかっただけかもしれないけど……。


亮はハチマキを受け取らずに、あたしの前にかがむ。


「亮?」


そんな亮に不思議になって声をかける。


「俺うまく結べねぇから。奈緒やって」

「……あ、うん」


亮が普通に言ったから、あたしも返事をしたものの……。

いざハチマキを巻こうとすると、緊張で手が震える。


< 159 / 459 >

この作品をシェア

pagetop