イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
「ところで奈緒ちゃん、亮に用事でしょ?」
関先輩に言われて、ジャージのポケットに手を入れる。
「あ、そうだった。はい、これ」
青いハチマキを差し出すと、亮は不思議そうにそれを眺めた。
「どうせ持ってないでしょ? 真ちゃんに言ってもらっといたの」
「……さんきゅ」
亮の言葉に、あたしは微笑んで見せる。
いつも助けてもらったり、支えてもらってるから、少しでもお返ししたくて。
っていうよりも……、
ただ、亮の役に立ちたかっただけかもしれないけど……。
亮はハチマキを受け取らずに、あたしの前にかがむ。
「亮?」
そんな亮に不思議になって声をかける。
「俺うまく結べねぇから。奈緒やって」
「……あ、うん」
亮が普通に言ったから、あたしも返事をしたものの……。
いざハチマキを巻こうとすると、緊張で手が震える。