イジワルな恋人
翌日学校に行くと、校門の前に止まっている桜木先輩の車に気付いた。
関係ない。
そう思って一度通り越して、でも、昨日からもやもやとしている気持ちが足を止める。
関係ないけど……。
気になる気持ちは誤魔化しきれずに、歩いてきた道を戻って桜木先輩の車を覗きこむ。
「……なんだ」
……いないし。せっかく、ちょっと緊張しながらも覗いたのに。
「……俺に何か用?」
誰もいない車内に、諦めて身体を起こした時、後ろから声が聞こえた。
突然の声に振り向くと、桜木先輩の姿があって……左頬には、新しいキズができてるのが分かった。
「……それ、顔のキズどうしたの?」
見上げながら聞くと、桜木先輩は少しバツが悪そうにあたしから目を逸らす。
「……女にやられたんだよ」
……女? もしかして、キャバクラの?
それともあたしの勘違い……?
色々と考えを巡らせて黙り込んでいると、桜木先輩の運転手さんが、学校の方から車に向かって歩いてくるのが見えた。