イジワルな恋人


食堂に入ると、座っていた席の隣に中澤先輩の姿はもうなくて。

ほっとして胸をなでおろす。


山本さんは……?

視線をを向けた先には、まだ亮の席の隣を陣取っている山本さんの姿があった。


「……そんなに気になる?」


山本さんを見ていたあたしを、亮がからかう。


「あ、奈緒! ピザ来たよー」


笑いかける梓に、笑顔を返してそれぞれ席に戻った。


「どこ行ってたのー? っていうか、桜木先輩と仲直りしたみたいでよかったね」


意味深な笑みを浮かべる梓は……きっと、変なことを想像してるに決まってる。


「……梓が思うような事はしてないからね」


そう言って梓のおでこをはじいた。

……でも、これで梓に嘘つかなくていいんだ。

今まで付き合ってるなんて嘘ついてて、正直、罪悪感を感じてた。

でも……、もう嘘じゃなくなったんだよね。


あたしの気持ちも、亮との関係も……。


本当に、付き合ってるんだから。


「やっぱり何かあったんじゃん。にやけちゃってやらしー」



嬉しさのあまり緩めた顔を見て、梓が楽しそうに笑った。




< 256 / 459 >

この作品をシェア

pagetop